Ye-夜 のこと

観劇感想を書こう!

1回しか観られなかったので、細かいところ記憶違いがあるかも知れません。

Yè -夜- 公式サイト

4月の観劇感想って、ひどいな自分…

 

公開されていたTOP画像や、あらすじが興味を惹かれるものだったからか、出演者のファンじゃない若手俳優オタ界隈の人もかなり行きたがっていましたね。

チケット結構取りにくかったように思います。

 

キャストの割に、公演日数短く、箱小さい。

観劇前は、日数増やすか箱大きくするかして欲しいと思っていました。

が、この内容で公演回数増やすのは役者への負担が大きい。

箱が小さいのは、アングラ感を出したかったのではないかなぁと思います。

内容的にも、大きい箱でやる内容じゃない。400すら大きすぎる。

だから、とってもチケット取りにくかったけれど、これが正解なのだろうと。

 

ただまあ、DVDは出しても良かったんじゃないでしょうかね?

記録映像の全景のみ3000円とかでいいから。

 

中国の地方都市。その寂れた裏路地に毎夜のように一人立ち、出会う客に身体を与える事で日々の糧を得ている水仙(スイシェン)。いつものように過ごす《夜》だったはずが、一人の青年と一人の少女との出会いが、その《夜》を変えていく。ゲイの自分に後ろめたさを感じながら水仙と《夜》の深い世界に溺れていく青年・夜来香(イエライシャン)。娼婦として水仙と同じショバに立つことに決めた薔薇(チアンウェイ)。

その出会いから紡がれる“自分を否定し、誰ともつながれない若者たちが、それでも、つながりを求めて生きようとする中で自分を見つめ直していく”物語。自分の気持ちに素直になれない、恋に臆病な若者たちに訪れる結末は・・・

 

で、感想。

題材としては、人の弱さ・人との関わり・恋 といったところでしょうか。

水仙と夜来香

水仙と薔薇

夜来香と薔薇

そこに薔薇の客で夜来香の会社の先輩である刺が絡む

 

水仙と夜来香は『両片思い』

考え方も社会への関わり方も正反対、同じなのは親に対して自分の後ろめたさ(夜来香はゲイであること、水仙は売春していること)を隠していること。

なぜ互いに惹かれあったのか、作中では語られないので観客が想像するしかないのだけど、恋に落ちる時は一瞬だし、理由はいくらでも言えるけど、後付けでしかない。

恋は思案の外

ってことなのかなぁ、と作中での水仙の逃げぶりを見ていて思いました。

 

 

水仙は理性では「夜来香と関わると傷つく」ってわかってる。こんなはずじゃなかった、ってずっと思ってる。だから、夜来香から逃げる。

 

でも恋してるので、気にかかるし、つい見てしまうし、構ってしまう。

 

最後の場面で出ていかなかったのを見て、私は「ああ、水仙はいつかきっと酷く傷つくだろうな」と思いました。しかもそう遠くない未来に。

でも、例えそうと分かっていても抵抗できないよね。好きな人が自分を求めてくれている、その少しの、でも絶対的な幸せのために膨大な苦しみという犠牲を払うと決めたのでしょう。

その覚悟が、哀しくて美しいなぁと思いました。

 

 

夜来香は、本当に普通。まっすぐで、社会の常識を自分の中に飼ってる。

そしてその常識で水仙を傷つけているのだけど、彼は自分の感情でいっぱいいっぱいになっていて、それに気付けない。

自分が正しいとどこかで思っているので、正しさで容赦なくひとを傷つける。

そしてそのことに無自覚。若い。まぶしい。

彼は水仙が好きで好きでたまらなくて、とにかく一緒にいたい。

未来をわざと見ないようにしているのか、単に今しか見えないのか…

本当に若い。若いとしか言えない。社会人の設定だけど、高校生くらいのメンタリティだなと思います。

いい子なんだけどね。ゲイじゃなければ28歳くらいで3~5歳下のほどほどに可愛くて大変気立ての良い嫁を貰って、子供2人作って郊外にローンで家を買って…というお手本みたいな人生歩みそうなタイプ。

 

 

薔薇ちゃん!「Oh!Yes!」に吹き出しそうになりましたwww

テクあるって言ってたのに!ひどい!!!!!www

 

水仙も夜来香も薔薇ちゃんと一緒になった方が幸せになれるのに、どうしてわざわざ傷つくのか。恋だからか。そうか。

でも、恋ではないけど、限りなく近い友情でもいいと思うんだけどなぁ。 

彼女は、愛に飢えてる子供。彼女が欲しいのは『恋』ではなく『愛』だと思う。

彼女だけが没交渉中とはいえ、親に自分の現状を正しく伝えている。

 

あ、『親』は自分の心の鏡なのか!

水仙も夜来香もどこか自分を後ろめたく思っていて、だから親に対して、親(自分の理想)が欲している虚像を演じている。

薔薇だけはそのままの自分を受け入れているのだな。

自分の現況の原因が自分自身にあるわけではない、と思っているからこその強さかもしれない。

 

大変いい子なので、幸せになってほしい。愛を与えられる人に会えるといいな。

 

 

この話のスパイス(激辛)の刺さん

上司(おそらく社長クラス、もしかすると大口取引先重役かも)の娘と結婚して逆玉に乗った人。

しかし嫁はわがままで家事が壊滅的

嫁に対しては文句が言えないので、溜まった鬱憤を娼婦を酷く扱うことで晴らしているという…クズです。

暗黒面の刺さんは娼婦たち(水仙や薔薇)の前でしか出しておらず、家庭でも会社でもよき夫・よき先輩として生きてる。

なので、会社の後輩である夜来香はホワイト刺さんしか知らなかったから、水仙に暴力を振るう刺さんに対して、まっすぐ正論で「僕たちは先輩の奥さんじゃありません」と。

そうだね、この物語は水仙と夜来香(薔薇もかな?)の物語だから、それでいい。

でも、刺だってそんなこと分かってる訳ですよ。でも止められない。

 

弱さを自分で認められない、一番近い人に弱さを曝け出せない、それはすごく辛いことだろうと思います。

その社会の一員として正しくあれ、という圧力は容赦なく心を押しつぶしにかかってきて、受け止めきれない部分が例えば体調不良だったり、うつ病だったりに発現したりする。

その発現の仕方が刺の場合は他人への暴力だった訳ですから、娼婦という逃げ場がなくなった刺のストレスがどこへ行くのか…奥さん殺してしまいそう。

どこにも救いがなくて、本当にこれから人生真っ暗だな、と思いました。

唯一の救いの道は、自分の弱さを受け入れること、その弱さを奥さんに見せることなのだけれど、刺はそれができないから、娼婦殴ってる訳です。

まあ、どんな理由があろうとも暴力は認められないし、自分が選んだ道といえばそれまでですが。

 

 

とにかく、最後の水仙と夜来香が寄り添う場面が最高に美しい。

ハッピーエンドのようで、これからの悲劇を予感させるような。

ああ、もう一度観たいな。再演してくれないかな…